全部、俺のものになるまで
私は頷いて、彼の横に並んで歩き出した。

エレベーターの前で、彼がそっと扉を押さえてくれる。

何気ないその仕草にも、大人になった時間を感じる。

そして、エレベーターが静かに動き出し、数階を過ぎたあたりで突然止まった。

「え……?」

私たちは顔を見合わせ、モニターを見ると「停止中」の文字が灯っている。

「直ぐ動きますよ。」

陽翔君が笑って言う。

「そうよね……」

でも、密室の静寂が不安を煽る。少し汗ばんだ手を握りしめた、その時だった。

「大丈夫です。俺がいますから。」

陽翔君が私をそっと抱きしめた。胸元に顔を寄せられ、ドクンと心臓が跳ねた。

「……ありがとう。」

腕の中の陽翔君は、もう昔の少年じゃない。

背も高く、体温も声も――全部が“大人の男”になっていた。

見上げると、真っすぐな目が私を見つめている。

「こんな偶然……あっていいのかな。」

ぽつりと呟くと、彼の目が静かに揺れた。
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