全部、俺のものになるまで
「逃げるなら今だよ。」

低く、優しい声。けれどその言葉に、私の心が強く揺れた。

逃げる?

――このまま本気の恋も知らずに終わってしまっていいの?

一歩だけ後ろに引いた足は、再び彼の方へと戻った。

「……私、知らなかったの。好きって、こんなに苦しくて、嬉しいものなんだって。」

私は涙を浮かべながら首を横に振った。

「逃げない。だって……私、陽翔君が好き。」

彼の目が見開かれた。

「……ありがとう。」

静かに、けれど熱を孕んで見つめ合うふたり。

運命の扉は、今、ゆっくりと開かれていく。

部屋に入ると、私はシャワーを浴びた。

熱い湯に打たれながら、これから起こることを想像して心がざわつく。

――本当に、このまま陽翔に抱かれるの?

けれど、不思議と怖くはなかった。

バスローブを羽織ってベッドに戻ると、そこには上半身裸の陽翔がいた。

鍛えられた胸板。真剣な眼差し。

その目に映るのは、私だけだった。
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