全部、俺のものになるまで
「んん……」

寝返りを打った陽翔が、ゆっくり目を開ける。

「ごめん、起こしちゃった?」

「……おはよう、ゆかさん。」

微笑む彼に、思わずこちらも笑みがこぼれた。

「おはよう、陽翔。」

陽翔はむくっと起き上がり、少し照れたように頭を掻いた。

「ごめんなさい、俺……今日このあと仕事で。」

「ああ、気にしないで。私、一人で帰れるから。」

そう答えながらも、胸の奥に小さな寂しさが広がる。

彼といた時間が、夢のように遠くなる気がして。

お互いに服を着終えた頃、部屋には静かな空気が流れていた。

ベッドの脇でネクタイを締めながら、陽翔がふと私を見た。

「また会う?」

その言葉に、思わず胸が高鳴った。でも──

「……ああ。」としか答えられなかった。

本当は、彼の方から「また会おう」って言ってほしかった。

約束のように、未来を指し示すように。

けれど陽翔は、さらりと言った。
< 48 / 105 >

この作品をシェア

pagetop