全部、俺のものになるまで
「……寝たのか。」


奥田先生の低い声に、私は何も返せなかった。

黙ったまま俯く私に、先生は小さく笑って言った。

「否定なし、か。」

それ以上は何も言わず、助手席のドアを開けてくれた。

私は陽翔の呼び止める声を背に、奥田先生の車に乗り込む。

「ゆかさんっ!」

切実な声が夜風に消えていく。

でも、振り返ることはできなかった。

車は静かに動き出し、やがて高台の夜景スポットへとたどり着く。

窓の外には、きらきらと光る街の灯り。

「結婚したら、浮気はなしね。」

助手席の私に向けて放たれた、冷静すぎる一言。

まるでビジネスの契約を交わすような口調に、胸がぎゅっと痛んだ。

私は先生の顔を見られなかった。

でも、こんな結末が望んだ未来じゃないことだけは、はっきりと分かっていた。

私が車の外に出ようとした瞬間、腕を引かれた。

「言っておくけど、俺、本気だから。」
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