全部、俺のものになるまで
階段を降りたところで、私は立ち止まり、左手をそっと差した。

「じゃあ、私……こっちだから。」

そう言うと、湊は何も言わずに、私の肩に腕を回してきた。

「えっ……」

驚く私に、湊は少し照れたように笑った。

「送って行く。」

「え……ほんとに?」

「なんだよ。彼女を家まで送るのは、彼氏の務めでしょ。」

そう言って肩に回された腕に、ふわっと力がこもる。

そのぬくもりに、胸の奥がじんわりと温かくなった。

寄せられた肩からは、守られている安心感が伝わってくる。

「うん。……ありがとう。」

私も自然と彼に寄り添い、もう一度そっと手を繋ぐ。

先ほどよりも強く、でも優しい力で握り返される。

夕暮れの住宅街。

街灯がぽつぽつと灯り始める中、

私たちは、互いの存在を確かめるように、肩を寄せ合いながら歩いた。

まるで、これまでの年月の分だけ、ゆっくりとふたりの距離が埋まっていくみたいに。
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