全部、俺のものになるまで
湊の腕が、ぴくりと反応する。

「ただ……ちょっとびっくりしただけで。」

心臓の音が、彼の胸の奥から伝わってくる。

ドクン、ドクンと早く、熱い音。

──ああ、私、今、湊の“男”の部分を感じてる。

「奈々……」

湊の声が、かすかに震えていた。

その名を呼ばれるたびに、胸の奥がじんわり温かくなる。

私達の関係が、少しだけ変わった──

「奈々……」

湊が、低く、切なげに私の名前を呼んだ。

その声に、胸の奥がきゅっと締めつけられる。

「俺は──奈々が好きだ。」

はっきりとしたその言葉。

私の鼓動が、急に速くなる。

「奈々は?」

まっすぐに見つめてくる湊の瞳。

私はその熱に耐えきれずに、目をそらしかけたけれど、すぐに視線を戻した。

「私も……湊が好き。」

はにかむように答えると、湊の表情が一瞬止まった。

それから、何かをこらえるように、眉を下げて私を見る。

「好きだったの。ずっと。小学生の時から、ずっと──湊のこと。」
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