全部、俺のものになるまで
湊が、ふっと息を漏らす。

そして、はははと照れたように笑った。

「なんだよ……俺たち、とっくに両想いだったんじゃん。」

その笑顔が眩しすぎて、思わず目を細めた。

「うん。」

そう答える私の手を、湊はそっと握った。

次の瞬間、彼の腕が私の背中に回る。

「……奈々。」

名前を、もう一度、愛おしそうに呼ばれる。

そして私たちは、互いの温もりを確かめ合うように、抱きしめ合った。

湊の体温が、私の胸に染み込んでくる。

長い時間をかけて育まれた想いが、ようやく言葉になって、触れ合って──

ひとつの形になった時だった。

週末。湊と映画を観に行った。

選んだのは、いま話題の恋愛映画だった。

『あなたが好き!』

『俺も!』

クライマックスで主人公たちがそう叫び合い、勢いよく唇を重ねる。

劇場の中には甘い空気が満ちて、私も自然と息を呑んだ。
< 71 / 105 >

この作品をシェア

pagetop