全部、俺のものになるまで
ある日、どうしても寂しくなって、私はつい、和臣さんの寝室に足を踏み入れてしまった。

朝の陽射しがカーテン越しに差し込む中、和臣さんはまだ眠っていた。

穏やかな寝息。いつもより少し無防備な表情。

その隣に、私はそっと横たわった。

同じ布団の中。こんなに近くにいるのに、胸が苦しくなる。

「んん……」

和臣さんが寝ぼけたように身じろぎをした。

今だったら……言えるかもしれない。

ずっと呼べなかった、あの言葉を。

「……お父さん。」

そっと呟いたその瞬間。

和臣さんが、私の方に寝返りを打った。

そして、目を閉じたまま、低く囁いた。

「俺……父親じゃない。」

「えっ?」

思わず、声が漏れる。

だけど、和臣さんはまた静かに寝息を立てはじめた。

……今のは、夢の中の言葉?

それとも、心の奥に隠していた、本音?

私は和臣さんの背中を見つめながら、胸の鼓動が速くなるのを止められなかった。
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