全部、俺のものになるまで
その日の夜。
私はソファーに座り、ぼんやりとテレビを眺めていた。

頭の中は、今日一日のことでいっぱいで、内容はほとんど入ってこなかった。

そんな時、和臣さんがお風呂から上がってきた。

濡れた髪をそのままに、タオルもかけずに歩いてくる。

上半身にTシャツを羽織っただけで、シャンプーのほのかな香りが一瞬、空気を変えた。

「和臣さん、髪……濡れてるよ。」

思わず立ち上がって、洗面所からバスタオルを持ってきた。

「ほら、風邪ひくよ。」

そう言って、私は彼の頭をガシガシと拭きはじめる。

少し乱暴だったかもしれないけれど、手を止められなかった。

和臣さんは黙って座っていたけれど、ふと、タオルの隙間から覗いた顔が私を見つめていた。

その視線は、父親のそれじゃなかった。

まっすぐに、熱を宿した瞳が私の中を射抜いた。

「……和臣さん?」

息を飲んで、私は手を止めた。

けれど彼は何も言わず、そのままじっと、私を見ていた。
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