全部、俺のものになるまで
ある日の休日。私は和臣さんと一緒に近所のスーパーに出かけた。

いつも通り、カゴを片手に食材を選びながら歩いていたら、突然声をかけられた。

「おお、心音ちゃん!」

店内の魚売り場にいたおじさんが、笑顔で手を振る。

「今日はお父さんと一緒か?」

一瞬、時が止まったような気がした。

私と和臣さんは顔を見合わせ、気まずそうに笑う。

「はい……まあ、そんな感じで。」

答えながら、胸が少し痛んだ。

確かに、世間的にはそう見える。

母の再婚相手――表向きには、私の“父親”。

だけど今はもう、違う。

私の中で、この人は「父」なんかじゃない。

ちらりと横を見ると、和臣さんが無言で私の背中をそっと撫でた。

その手の温かさに、私はふっと息を吐いた。

――気にするな、ってこと?

何も言わないのに、ちゃんと気持ちが伝わってくる。

私は和臣さんに小さく頷いて、そっと微笑んだ。

私たちだけが知っている秘密。

それが今、この何気ない日常を、少しだけ特別にしていた。
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