かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜
なるべく消化のいい、それでいて栄養がしっかり取れるものにしよう。
消化にいいといえばネバネバものだ。意外にというかオクラはアメリカでもポピュラーな野菜だった。特に南部料理でよく使われるらしい。
マンハッタンのスーパーでは生のオクラはあまり見かけないけれど、質のいい冷凍野菜が一年を通して手に入る。

オクラのおひたしとあとは…献立を考えて夕飯作りに集中しようとする。

それなのに、透さんが帰宅したとき、夕飯は七割も仕上がっていなかった。
メインを黒酢酢豚にしたら下ごしらえに時間がかかってしまったのと、それ以上に気が散ってしまっているせいだ。

「ごめんなさい、支度遅れちゃってて。すぐ仕上げるからソファで座っててくれる」

テーブルに箸だけ並べて慌ただしくキッチンに戻ろうとする———わたしの腕を透さんが捕らえた。
思いがけない強い力に、言葉が出ないまま彼を見上げる。こちらの目の底を覗きこむような鋭い眼光だ。
彼がわたしを腕ごと引き寄せると同時に、かがんで首すじに顔を寄せてきた。
何を…?
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