推しに告白(嘘)されまして。




驚きすぎて何も言えない。
ただただあれは本当に千晴なのかと疑いの目で、コート内にいる千晴を睨みつけている。
するとそんな千晴とおそらく目が合った。
それから千晴は、何故か嬉しそうに目を細め、こちらに軽く手を振ってきた。



「「きゃああああ!!!!」」



その瞬間、自分に手を振られたのではないか、とギャラリーの主に女子たちが悲鳴を上げた。

罪な男である。

はは、と今の状況に苦笑し、一瞬だけ、千晴から視線を逸らし、再び戻すと、先ほどまでそこにいた千晴の姿が忽然と消えていた。

…もしかして、千晴によく似た美人な誰かを千晴と勘違いしてしまったのか?
見間違いor勘違い?


「…ねぇ、あれ、絶対千晴くんだったよね?」



どうやら見間違いでも勘違いでもないらしい。

雪乃に真剣な顔でそう言われて、あの華守学園側にいた男は確かに千晴だった、と、疑念から確信へと変わった。

本当に何故、華守学園側に千晴がいるんだ。



「やっぱりそうだよね…」

「よね?何であんなところにいたんだろうね?千晴くん」



未だに状況が信じられない私たちは、互いに首を傾げながらも、先ほどのことは現実だったのだ、と再確認し合う。
そんなことをしていると、後ろが何故か突然騒がしくなり始めた。

…何事だ。

不思議に思って、後ろを振り向く。
するとそこには人目を引く、金髪の美人、千晴がいた。



「柚子先輩」



そして騒ぎの中心である男、千晴は私と目が合うと嬉しそうに笑った。

…やっぱり、間違いなく、彼は紛うことなき、千晴だ。
見間違いでも、勘違いでもない。



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