推しに告白(嘘)されまして。




「…こんなところで何してるの、千晴」



当然のようにここにいる千晴の格好は、やはりバスケをする気満々の格好だ。
なので私は、こちらにゆっくりと近寄ってきた千晴に、疑問の視線をぶつけた。



「え、普通に試合しにだけど」



私の質問に千晴が不思議そうに首を傾げる。
…いやいやいや、不思議なのはこちらなんですが。



「…いや、そりゃ、その格好見れば、何となくそうだろうな、とは思えるけどさ。何で千晴が華守学園側にいた訳?千晴はうちの高校の生徒でしょ?」

「あー」



最初は不思議そうにしていた千晴が、腑に落ちたような顔をする。
それから何でもないように続けた。



「華守の知り合いから強豪校と試合するから試合に出てくれって頼まれて。別に出る気なんてなかったけど、先輩、この試合観に行くって言ってたでしょ?だから俺も出ようかなって」

「…はぁ」



千晴の淡々とした説明に、自分から聞いておいてなんだが、歯切れの悪い返事をしてしまう。

華守学園は初等部から大学部まである超お金持ち学校だ。そこの誰かとなど、普通の家庭で育った者は、まず関わることはない。
私たち一般人からすると、雲の上の存在なのだ。

それなのに千晴は、華守学園の知り合いに頼まれて、今ここにいると言った。

…全く理解に苦しむ話だ。

しかしふと私はあることを思い出した。
そういえば、千晴とメルヘンランドに出かけたあの日、千晴の言動が明らかに一般人にしてはおかしかったことを。

頂き物のVIPチケットに、送迎は自家用らしいリムジン。
全て何かの景品かな?と軽く考えていたが、あれは景品でも何でもなく、ただただ千晴の家の力でできていたことだったとしたら。



「…千晴、アンタ、中学はどこだったの?」

「ん?華守だけど」

「…っ!?」



ボンボンじゃんかー!

恐る恐る投げかけた質問に、平然と答えた千晴に驚きで大きく目を見開く。

華守学園出身ということは間違いなく、千晴の家はとんでもないお金持ちだということだ。
頂き物VIPチケットの謎も、自称自家用のリムジンの真相も、全て今の千晴のたった一言でわかってしまった。



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