推しに告白(嘘)されまして。
2.推しと付き合うことになりまして。

1.変わらない日常





*****



朝、いつものように委員会活動という名の服装チェックを校門前でしていると、とある噂話が聞こえてきた。
「あの鉄子が王子と付き合っているらしい」と。

鉄子とはもちろん私、鉄崎柚子のことであり、王子とはそう間違いなく疑う余地もなく、あの私の推し、沢村悠里くんただ1人である。

沢村くんに告白され、数日。
まだまだ私たちの関係について半信半疑である声をよく耳にするが、私たちは間違いなく、数日前から付き合っていた。
何と幸せな事実なのだろうか。



「おはよう、鉄崎さん」



嬉しさと幸せのあまり緩んでしまいそうになっていた顔に力を込めていると、人混みの中からとんでもないイケボが聞こえてきた。
この声は間違いなく沢村くんだ。



「おはよう、沢村くん」



声の方へと視線を向けると、そこにはやはりとんでもなくかっこいい、王子と呼ばれていることにも頷ける、沢村くんがどこかぎこちなく私に微笑んでいた。
朝日を浴びて微笑む推し、素晴らしすぎて涙が出そうだ。



「…そ、それじゃあまた」

「うん、またね」



挨拶もそこそこにその場から離れる沢村くんに私はにやけそうな顔にさらに力を入れて、何事もないように対応する。

彼女だからこうやって挨拶してもらえるんだよね!

以前なら数ある生徒の内の1人として沢村くんに挨拶していたし、沢村くんも私1人に対して挨拶なんてもちろんしてくれていなかった。
そういう関係だった。

それが今では目と目を合わせて挨拶する仲だ。
付き合うって本当に素晴らしい。




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