推しに告白(嘘)されまして。
「…あれ、本当に付き合っているのか?」
「誤情報じゃね?」
「えー。でも確かに付き合っているって聞いたけど」
私たちの会話に何やら周りの生徒たちがざわざわし始めたが、私は特に気にしなかった。
私についての噂なんてよくあることだし、いちいち聞き耳を立てていては仕事にならない。
噂話ではなく、集中しなければならないのは生徒一人一人の服装の確認だ。
ぼーっとただ見ているだけでは見逃す可能性だってある。
隠すように付けているピアス、腕輪、ネックレス。
こっそりしている化粧。入れ忘れたシャツに、付け忘れたネクタイにリボン。
間違い探しのようにしっかり見なくては生徒たちも対策をしてくるのだ。
そうだからしっかりと…。
そう思いながら人混みを睨みつけていると、今日も遠くの方からキラキラと輝く金髪を見つけてしまった。
周りと比べて身長も高いので、遠くからでもよく目立つ。
「こらこらこらこら!」
ずんずんと一歩一歩力を込めながら今日もダイナミック校則違反の元へと向かう。
そんな私を見てダイナミック校則違反こと、千晴は「あ、先輩、おはよぉ」と機嫌よく笑ってきた。
「おはよぉ、じゃない!今日もなんて格好で登校してんの!」
千晴の元までやってきた私はまず目に付いたネクタイをギュッと締める。
それから何故か開いているシャツの下のボタンをせっせと留め始めた。
「何でこんなところまで開いているかな?あとピアス、それも外して。髪も黒にしなさい」
ボタンを留め終わった後、バンッと千晴の胸を叩いたのだが、千晴は何故か嬉しそうで頭が痛くなった。
コイツには本当に何を言っても響かない。