推しに告白(嘘)されまして。
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まだ練習があるから、と悠里くんと別れた後、私は別行動をしていた雪乃と合流する為に、2階のギャラリーへと向かっていた。
そして体育館の廊下で、たまたま千晴と鉢合わせた。
「…先輩」
どこか不満そうにこちらを見る千晴に、何が言いたいのかだいたい想像がつく。
「何で俺じゃなくてアイツを応援したの」
それから予想通りの不満を口にした千晴に、私は思わず、苦笑した。
そう言うと思ったよ。
悠里くんじゃなくて、自分を見て、とか言ってたもんね。
私はあの試合中、ずっと千晴ではなく、悠里くんを応援していた。
しかしそれはどう考えても当然のことだった。
「私は元々悠里くんの応援にここに来たんだよ?だから悠里くんの応援しかしないよ。そもそも自分の高校の方を応援するでしょ?普通」
「…」
呆れながら説明しても、変わらず機嫌の悪そうな千晴に無言の圧をかけられ、さらに苦笑してしまう。
聞き分けの悪い子どもの相手をしている気分だ。
「…まぁ、アンタの応援は一ミリもしてなかったけど、アンタがめちゃくちゃバスケ上手いことには正直驚いたよ。経験者なのもよくわかった。絶対才能あるし、うちの高校で続けて、プロ目指した方がいいんじゃない?」
話題を変える為に千晴のことを、私は本気で真面目に褒める。
ただ話題を変える為にした話とはいえ、私は本当に本気で千晴の実力に感服し、うちの高校でバスケを続ければ、プロへの道も切り開けると思った。
そんな思ったことをただ口にしていた私を千晴は、先ほどとはまたどこか違う雰囲気で、まじまじと見つめてきた。
「かっこよかった?」
無表情ながらも、焦がれるような瞳で私の瞳の奥を覗く千晴。
まるで私を探るような千晴の視線に私は当然のように頷いた。