推しに告白(嘘)されまして。
「うん。かっこよかったよ」
「本当?」
「本当」
変わらぬ表情で念を押すように聞いてきた千晴に、私は呆れたように笑顔で答える。
悠里くんのかっこよさには劣るが、それでも千晴にもたくさんかっこいいところがあった。
真面目にバスケに取り組む姿は、正直見たことのない姿で、きちんとかっこよかったし、女子たちが怖がりながらも、黄色い声をあげてしまう理由もわかった。
この男は綺麗で美人で、そして何よりバスケをしている時は、まるで1人だけ世界が違うように美しく、圧倒的なのだ。
私の答えに千晴は「…そっか」と噛み締めるように呟き、どこか嬉しそうに口元を緩めた。
それから今度は機嫌良く続けた。
「俺もう帰るから一緒に帰ろ、先輩」
先ほどの不満はどこへやら。
すぐに気持ちを切り替えた千晴に、私は思わず笑ってしまう。
「無理だよ。今日は雪乃と一緒だから」
「じゃあ、3人で帰ろ?」
「雪乃が了承したらね」
「やった」
呆れたように千晴を見る私に、千晴が嬉しそうに笑う。
そんな千晴に私は、笑えば年相応で可愛らしいのだなと、思った。
「あ、あれが彼女だなんて!」
私たちを物陰から見ていた誰かの一言に、私は当然気づかなかった。