推しに告白(嘘)されまして。




では、一体誰が我が家にやってきたのか、推測していると、扉の外、一階の玄関からお母さんの声が聞こえてきた。



「柚子ー!柚子の彼氏さんの妹さんがいらしたわよー!」



私の彼氏さんの妹さん?

お母さんの言葉に首を捻る。

私の彼氏さん=悠里くんだ。
つまり、今、我が家の一階、玄関には悠里くんの妹さんがいらっしゃるということなのか。

推しの妹。絶対に可愛い。
ご挨拶しなければ。
「アナタのお兄さまとお付き合いしております!」と。

そこまで考えた私は、ドタバタと自分の部屋から飛び出て、そして、すごい勢いで階段を駆け降りた。

まず目に入ったのは、お母さんの見慣れた背中で。
お母さんの手には高級そうな紙袋があり、今そこにいる推しの妹さんにいただいたのだ、と私はすぐに理解した。
それからお母さんの視線の先を辿ると、そこには、上等そうな白いワンピースに身を包む中学生くらいの少女と、その少女の背後に並ぶ、ゴリマッチョスーツ4人組がいた。

…とても異様な光景である。

うちの一般的な玄関にはとてもじゃないが、収まらない人数で、ゴリマッチョスーツたちは玄関の外にいる。

あの少女は何者なのか、と階段を降りながらも、まじまじと見ると、何だか見覚えのある顔立ちをしていた。

透明感のある栗色のふわふわの髪。
その綺麗な髪を高めにハーフツインにしている彼女の顔は、とても整っており、美人だ。
悠里くんの妹さんのはずなのに、その美しさがあまりにも悠里くんではなく、千晴を感じさせた。

つい先ほどまで、千晴の写真を見ていたから、そう思ってしまうのか。

美少女は、玄関までやってきた私と目が合うと、その美しい瞳を細めて、膝を軽く曲げた。



「初めまして。わたくし、華守千晴の妹、華守千夏(はなもりちなつ)と申します」



可憐に挨拶をする美少女、千夏ちゃんに、思わず、眉間にシワを寄せ、口をぽかーんと開けてしまう。

ツ、ツッコミどころが多すぎる!
私の彼氏は悠里くんのはずなのに、ここでは何故か千晴が私の彼氏になってるし!
千晴の妹を名乗る美少女が、何故かうちにご訪問しているし!
その美少女の後ろには、ゴリマッチョスーツが、真面目な顔で控えているし!

一体これは何!?
どこからツッコミを入れるべきなのか!?



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