推しに告白(嘘)されまして。




「日本を牽引する華守グループの跡取りであるお兄様の選んだお相手が、一体どんなお方なのかとわざわざ見に来たのだけれど…。まさかこんな家に住むようなお方だったなんて…」



気が付けば、何故か千夏ちゃんは憐れむように視線を伏せ、大きなため息をついていた。

明らかに失礼な態度を取られていることはわかっている。だが、そんなことよりも、千夏ちゃんから出た、いろいろな情報が、どれも聞き逃せないもので、それどころではなかった。

まず〝華守グループ〟だ。
華守グループといえば、日本有数の様々な企業を抱え、幅広い分野でその名を轟かせている超有名なグループだ。
この間、千晴と行ったメルヘンランドも、確か華守グループの傘下だったはずだ。
さらに身近なところでいえば、華守学園も名前の通り、華守グループが創立、運営している学園だった。

つまり、何が言いたいかというと、華守グループは日本有数の超がつくお金持ちだということだ。
そして何故かその華守グループの跡取りが千夏ちゃんの話では、何と千晴のようなのだ。

…納得しかできない。
いろいろと素行の悪さが目立つが、華守学園出身で、一般人には理解の及ばないスーパーお金持ちで、さらには名字が華守。
華守グループのご子息だと言われても、妙に納得してしまう。
そんなスーパーロイヤルお坊ちゃまが、どうして普通の高校であるうちに通っているのか全くわからないが。

さらに目の前にいる美少女は、絶対に聞き逃せないことを言っていた。
それは…。



「千夏ちゃん。私は千晴の選んだお相手ではないよ?」

「…は?」



おそらく私のことを千晴の選んだお相手…つまり、彼女だと勘違いしている千夏ちゃんに、丁寧にゆっくりと事実を伝えてみる。
すると、千夏ちゃんはおかしそうに私を見た。



「何を言っているの?アナタがお兄様の彼女なのは、明白でしょう?こんな家に住んでいることを知られて、恥ずかしくなったの?」

「いや、違うよ。恥ずかしくないし、事実を言っているだけだよ?」

「じじつ?」



私の言葉にますます怪訝そうに千夏ちゃんが首を傾げる。
全く私の言葉が理解できない、と言いたげな瞳に、私は困惑した。

一体何を根拠にここまでまっすぐと、私を自身の兄の彼女であると勘違いしているのだろうか。



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