推しに告白(嘘)されまして。
いつの間にか出された千夏ちゃんの結論に、苦笑いを浮かべる。
そもそも私は千晴の彼女でも、特別でもないのだが。
呆れつつも、まだ勢いよく続く千夏ちゃんの言葉に、私はしばらく黙って耳を傾けることにした。
「お兄様はとても優秀な人間なの。一つの欠点さえない完璧な存在。それがわたくしはいつも悔しいけれど、同時に誇らしかったわ。華守を継げる素質しかないもの。正直、どんなに努力したってあのお兄様には敵わない。…それなのに」
そこまで言い終えると、一旦、千夏ちゃんは一呼吸つく。
それから眉間に深いシワを寄せ、険しい顔をした。
「今、まさに完全無欠のお兄様に唯一の欠点ができようとしているのよ!?そんなの許されるはずがないじゃない!だからわたくしはアナタが華守の女に相応しいのか見極めるの!」
そう千夏ちゃんに高らかと宣言され、私は「はぁ」とまた間の抜けた返事をしてしまう。
当事者意識のないやる気のない返事なのは重々承知なのだが、そうなっても仕方のない状況だった。
私は何度も言うが、千晴の彼女ではないのだ。
「千夏ちゃん、落ち着いて?あのね、まずなんだけど、その見極める必要がそもそもないのよ。私は千晴の彼女じゃなくて…」
「見極める必要がない?余裕そうじゃない?」
何とか千夏ちゃんの誤解を解こうとしたのだが、どうも肝心の〝彼女ではない〟という部分が聞こえていなかったご様子で。
高圧的な笑みで千夏ちゃんはこちらをまっすぐと見つめる。
「今に見てなさい!アナタのボロを必ず見つけ出してやるわ!」
それだけ勢いよく言うと、千夏ちゃんはさっさとこの部屋に鋭い視線を投げ続けていたゴリマッチョスーツたちを連れて、帰宅したのだった。
千夏ちゃん、本当に誤解だよ。
私はアナタのお兄様の彼女ではないんだよ。