推しに告白(嘘)されまして。
校門の前で、いつものように生徒の波をじっと見つめる。
文化祭前だからこそ、生徒たちは減点を恐れて、校則を守る生徒と、逆にいつもとは違う空気に負け、校則をギリギリのラインで破る生徒で分かれる。
そこの見極めがなかなか難しく、苦労するのだ。
なので、私の顔はいつもの数倍は険しい顔をしているようだった。
「鉄子が視線で俺たちを殺そうとしている」と、言う声がちょくちょく聞こえるが、気にしてなどいられないのが現状だ。
先ほどからギリギリ校則を破っている生徒を見つけては、細かく注意をし、次回から減点することを伝えること数十分。
人の波の奥の方にその存在は現れた。
秋の柔らかな日差しを浴びて、相変わらずキラキラと輝く金髪。
一際目立つ、高身長に手足の長いモデル体型…がおしゃれに着こなしている校則違反だらけの制服。
シャツのボタンは第二ボタンまで開けられており、何故かその首元にはネクタイがない。さらには学校指定のブレザーでもセーターでもなく、大きめの黒のパーカーを当然のように着る始末。
耳にはピアス、手にはブレスレット、首にはネックレス。
こんなにも堂々とダイナミック校則違反するやつなんて、この学校には1人しかいない。
「華守千晴!」
気がつけば、私は鬼の形相でそう叫び、千晴に詰め寄っていた。
そんな私に呑気に「あ、おはよ、先輩」とか言っている千晴に頭が痛くなる。
「…おはよ、じゃないでしょ?頭からつま先まで校則違反なんですけど?」
「うん」
「うんって…」
私に注意されても、当の本人は平然としており、「自分の一体何が悪いのか」と言いたげな態度だ。
千晴の様子に眉間にどんどんシワがよっていく。
将来眉間に消えないシワができたら、原因は間違いなく、コイツだ。
「文化祭期間中の風紀委員からの採点は知ってるよね?」
「うん。だいたい」
「じゃあ、校則違反一つにつき、一点減点ももちろん知ってるよね?」
「うん」
「じゃあもうわかるよね?アンタ今だけで何個校則破ってる?何点減点だと思っている?」
「さぁ?」
冷静に淡々と説明していく私に、千晴が無表情のまま答え続ける。
そして最後の千晴の間の抜けた返事に、私まで力が抜けてしまった。
どうしてここまでマイペースで無関心なのか。