推しに告白(嘘)されまして。

3.最強の推し





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文化祭まで残り1週間。
学校内はいよいよ間近に迫った文化祭に向けて、忙しなくなっていた。

いつもより早めに授業が終わり、いつもより長い放課後が、全て文化祭準備に充てられる。
我が校はスポーツ科もあり、部活にも力が入っている為、部活をしている者は、部活優先で、部活終了後に、文化祭準備に合流する。
委員会活動も同じで、風紀委員所属である私も、委員会活動後に、文化祭準備に参加していた。

私のクラス、2年の進学科の出し物は、第二校舎の3階と4階を使った大規模な脱出ゲームだ。
きちんとストーリーも考えられており、そのストーリーとは、鷹野高校の文化祭に参加していたプレーヤーたちが、気がつけば、過去に一度、廃校してしまった鷹野高校へと迷い込む、というものだ。

何故プレーヤーたちは、過去の鷹野高校へと、迷い込んでしまうのか。
それは、とある病気で死んでしまった女子生徒の心残りの影響からだった。

脱出条件はたった一つ。
その心残りを解消すること。

過去の鷹野高校へと迷い込んだプレーヤーたちは、まず最初に何かを悔やんでいる女子高生のすすり泣く声と、誰かの名前を聞くことになる。
その名前こそが、心残りを解消する最初のヒントとなるのだ。

そのヒントを頼りに、プレーヤーたちは、廃校内を自分の足で歩き、時には廃校にいる生徒たちに声をかけ、ヒントを貰い、時には用意されている謎を解いていく。

最後に心残りを解消することができると、ゴールへと辿り着け、晴れて脱出成功、というわけだ。

舞台が過去の鷹野高校で、廃校なので、実は大して準備するものはなかった。
今の第二校舎を少々いじれば、すぐに廃校風にはできる。
衣装に関しては、〝昔の鷹野高校〟がコンセプトなので、男子生徒は学ラン、女子生徒はセーラー服となっていた。

脱出ゲームの中で、生徒たちは様々な仕事をするのだが、私の仕事は、プレーヤーたちに、ヒントを与える登場人物になること。
生徒たちに話しかけられた時、「あの子には好きな人がいた。確か名前は…」と言うだけの役だ。



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