推しに告白(嘘)されまして。
ストーリーも完成され、謎もある程度できている為、あとは、装飾や衣装、謎の配置などを考えるだけだが、これがなかなか大変で忙しい。
放課後のクラス内は、今日も忙しなく、全員がそれぞれの作業に没頭していた。
もちろん私もその中の1人で、雪乃やクラスメイトたちと共に、廃校に必要な装飾を作っていた。
私の担当はボロボロのカーテンを作ることだ。
指示された通りにハサミを動かしていると、その声は聞こえてきた。
「王子が吸血鬼になってる!」
へ?
廊下から聞こえてきた黄色い女子生徒の声に、思わず肩が跳ねる。
うちの学校の王子は1人しかいない。
そうバスケ部の王子こと、私の推し、悠里くんだ。
つまり、悠里くんが今、まさに吸血鬼になっているということで…。
推しが、吸血鬼?
廊下の騒ぎに、教室内も内面の私と同じように、ざわめき始めた。
「ゆ、悠里くん、今、吸血鬼なの?」
「確か、スポーツ科は吸血鬼カフェだったよね?」
「絶対かっこいいじゃん…」
「み、見たい…」
主に女子生徒たちが、キラキラと目を輝かせ、作業中の手を止める。その中には、教室から出て行く者まで現れた。
私は騒がしいクラスメイトたちを横目に、静かに頷いていた。
全く何もかもに共感できる。
悠里くんたち2年のスポーツ科は、彼女たちが言っていた通り、何と吸血鬼が接客をしてくれる吸血鬼カフェだった。
なので、当然、そのクラスに所属している悠里も吸血鬼になる。
吸血鬼な悠里くん、絶対にかっこいい。
間違いなく、素晴らしく、尊いに決まってる。