推しに告白(嘘)されまして。
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「…っ!」
次に目覚めた時、私は誰かに横抱き…お姫様抱っこされ、廊下内を移動していた。
私の足元には、下着が見えないようにと、配慮された黒いコートまでかけられている。
相手のことを思い、気遣える優しい性格に、見覚えのある黒コート。さらには鼻をかすめる優しい香り。
この香りを私は知っていた。
このファビュラスな香りは間違いなく、私の推し、悠里くんのものだ。
そこまで理解するのにかかった時間は、たった3秒だった。
「…ゆ、悠里くん、お騒がせしてごめんね。もう大丈夫だよ」
私をしっかりと抱える悠里くんに、私は目覚めて早々、申し訳なさそうにそう言う。
きっと悠里くんは、急に倒れた私をとても心配し、率先して運んでくれているのだろう。
おそらく保健室に。
「遠慮しないで、柚子。ゆっくり休んでて?」
ふわりと笑う悠里くんは、何よりも眩しくて。
まるで本物の王子様のような悠里くんに、私の心臓はズキューンと撃ち抜かれてしまった。
とんでもないラブ狙撃手だ。
申し訳なさが先にきた為、最初こそ何も意識していなかったこの体勢も、冷静になった今、急に心臓がドンドコドンドコうるさくなっていく。
推しが今、私をお姫様抱っこしてくれているんだぞ?
体が密着しているんだぞ?
耐えられるわけがない!
「ゆゆゆゆゆゆ、悠里くん!あの、もう、本当に大丈夫だから!」
だからもう降ろしていただきたい!
そう、悠里くんに言おうとした。
したのだが。