推しに告白(嘘)されまして。
「荷物、持ってくるね」
悠里くんの全てにやられていると、悠里くんは優しくそう言って、保健室から出て行った。
それから数分後。
悠里くんは二つの鞄を持って現れた。
一つは私のスクールバッグ。そしてもう一つは、何故か悠里くんのリュックだ。
まるで私と一緒に帰ろうとしているように見える悠里くんに、私は首を傾げた。
「…荷物、ありがとう、悠里くん」
「いえいえ。少し休んだら帰ろうね」
「…うん。ん?」
…帰ろうね?
悠里くんの言葉にますます疑問を抱く。
何故か私の荷物と共に持ってきた自分の荷物に、先ほどからの言動。
やはりどう見ても、悠里が私と一緒に帰ろうとしているようにしか見えない。
「…悠里くん、今日作業長引きそうなんだよね?まだ帰れないんだよね?」
「うん。けど、作業よりも彼女の方が大事だから…」
おそるおそる問いかけた私を心配そうに、労るように、悠里くんがまっすぐと見つめる。
本当に本当に悠里くんは優しい人だ。
私のことを気にかけて、少しでも休めるようにしてくれて。
さらには彼氏としての責任感から、こんなにも何とも思っていない相手に優しくできるなんて。
甘い夢を見させてもらえている私は、なんて幸せ者なのだろう。
これからも悠里くんを推す者として、精一杯、彼女という名の壁の仕事をしなければ。
優しい眼差しをこちらに向けてくれている悠里くんに「ありがとう」と小さくお礼を言うと、悠里くんは優しく笑ってくれた。