推しに告白(嘘)されまして。




ベッドに横たわったまま、改めて、ベッドの横の椅子に座る悠里くんをじっと見つめる。

先ほどまで私の足元にかけられていた黒いコートはもうどこにもなく、悠里くんは制服姿に戻っていた。
けれど、先ほどからチラチラと見える牙は健在で、今の悠里くんは、制服姿の吸血鬼だ。

制服姿の吸血鬼な推しも何と尊いことか。
逆に日常に紛れ込んだ非日常、という感じがしてとてもいい。

吸血鬼カフェって、どんなことするのかな。

すっかり夢中になって、悠里くんのことを観察し続けていると、そんな私の視線に気づいた悠里くんと目が合った。



「…な、何?」



私の不躾な視線に、悠里くんが恥ずかしそうにそう言う。
私は悠里くんの様子に慌てて、謝罪をした。



「ご、ごめん!ごめんね!嫌だったよね!?本当にごめんね…。きゅ、吸血鬼な悠里くんがあまりにもかっこよくて、つい見入ってしまって…」



最初は勢いよく、途中からその勢いをなくし、本当に申し訳なさそうに悠里くんに頭を下げる。
推しを不快にさせるなんて最低だ。

両手をギュッと握りしめ、深く深く反省していると、その声は聞こえてきた。



「…柚子、触ってもいい?」

「へ、あ、うん、どうぞ」



頬を赤くし、遠慮がちに私を見る悠里くんに、よくわからないまま私は頷く。
すると、悠里くんはするりと私の首元に手を伸ばし、シャツのボタンをいくつか外すと、首元をはだけさせた。



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