推しに告白(嘘)されまして。
…な、何?
そう思ったのと、悠里くんがそこに唇を寄せたのは、ほぼ同時で。
…え?
気がつけば、悠里くんは私の首元に、優しくキスをしていた。
とんでもない甘い状況にクラクラしてしまう。
すぐそこにある推しの顔。
甘く爽やかな匂いでいっぱいになり、私の全てを支配する。
それから首元に感じる、確かな柔らかな感触。
一瞬だけ触れたそれは、すぐに私の首元から離れた。
そして鋭い何かがまた私の首元に優しく当てられた。
悠里くんの牙だ。
「…ひゃあ」
突然の感触に、思わず変な声を出してしまう。
とんでもない状況にどうすればいいのかわからず、狼狽えていると、悠里くんが私から離れた。
私から離れた悠里くんは、私と同じように耳まで真っ赤で。
「…どう?吸血鬼っぽかった?」
と、照れながらこちらを見た。
悠里くんの完璧な吸血鬼にやられてしまった私の心臓は、ドンドコドンドコと大騒ぎで、平静をどうしてもいつものように保てない。言葉が上手く出ない。
だが、悠里くんの問いに答えない訳にもいかないので、私はとにかく素晴らしすぎたことを伝えるために、激しくうんうんうんうんと何度も何度も頷いた。
それから少しして、落ち着いた私は、悠里くんにおそるおそる聞いた。
「…さ、さっきのが吸血鬼カフェの内容なの?あんな感じで接客するの?」
「な、ち、違うよ!柚子だからしたんだよ!そんな接客ないから!」
私の質問に悠里くんは盛大に照れていたのであった。