推しに告白(嘘)されまして。
4.白雪王子
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文化祭まで残り、5日。
今日も私は、文化祭準備で賑わう放課後の校内を、目を光らせながら歩いていた。
生徒たちが浮かれて、ハメを外しすぎないように。
そして風紀委員として、文化祭期間中の仕事をきっちりこなす為に。
手元にあるタブレットで文化祭期間中の仕事、採点を行う。
いい行いには一点、加点。悪い行いには一点、減点。
そんなことを繰り返していると、廊下内で、見覚えのない生徒と遭遇した。
「あ、先輩」
聞き覚えのある声で、馴れ馴れしく私を呼ぶ、とても綺麗で美人な黒髪の男子生徒。
見覚えはないが、聞き覚えのある声に一瞬、首を捻る。
「…え、千晴?」
しかしそれもほんの数秒で、すぐにその黒髪の生徒が千晴だと私は気がついた。
いつもとは全く違う千晴の見た目に、思わず目を見開いてしまう。
あまり着崩されていない制服に耳にないピアス。
ネクタイもちゃんとあるし、着用しているセーターも学校指定のものだ。
それから何より目を引いたのは、ふわふわの黒髪だった。
千晴の金髪姿をあまりにも見慣れすぎていた為、最初、本当に誰だかわからなかった。
「こ、更生した?」
もしそうだとしたら何と素晴らしいことなのだろうか。
今まで散々私が何を言っても、全く響かず、マイペースに我が道を突き進んできた千晴が、ついにルールを守ろうと思えるようになったとは。
これで見た目だけなら怖さが半減する。
少しくらい友達だってできるはずだ。
千晴の素晴らしい大きすぎる変化に、最初は戸惑いもあったが、徐々に状況を理解すると、その戸惑いはなくなり、喜びへと変わった。
「千晴!よくやったよ!私、本当に嬉しいよ!」
「…先輩、なんか勘違いしてない?これ、出し物の格好。ウィッグだから」
あまりの感動に涙を堪えながら、千晴の肩をポンポン叩いていると、そんな私に千晴はへらりとゆるく笑った。
それから続けて「服装は減点防止ね。最優秀賞取らなくちゃだし」と言ってきた。
…更生ではなく、文化祭期間限定の姿のようだ。
それでも私は、「最優秀賞なんてどうでもいい」と、言っていた千晴が、クラスメイトと一緒にそれを本気で目指そうとしている姿勢が、なんだか嬉しかった。