推しに告白(嘘)されまして。
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風紀委員の仕事を終え、私は自分のクラスではなく、千晴のクラスへと向かった。
理由はもちろん先ほどの約束を守る為だ。
千晴のクラス、一年の進学科に着き、教室内をそっと覗けば、そこには、進学科の一年生たちが、一生懸命練習している姿があった。
「白雪王子はとても美しい王子様で、歌うことが大好きです」
ナレーションを担当しているであろう生徒がゆっくりと、それでいてハキハキと聴きやすい声で、台本を読む。
そんなナレーションに合わせて、周りの生徒たちは動いていた。
どうやら見た感じ、演者は喋らず、全てナレーションの生徒によって、話が進んでいくようだ。
その中でもやはり一際目を引いたのは千晴だった。
高身長に綺麗な体のライン。少し細いがそれでも筋肉のあるモデルのような体型。顔も相変わらず作り物のような美しさで…。それでいて誰よりもだるそうに、非常にやる気のない動きをしていた。
…悪目立ちしている。
というか、これ、私との練習いる?
てっきり、主人公なので、とんでもない長台詞でもあるものだと思っていたが、ナレーションに合わせて動くだけなら、私との練習など不要なはずだ。
むしろ、クラスメイトたちとこうやって合わせる方がよっぽどいいだろう。
そんなことを思っていると、教室内にいた千晴と目が合った。
「柚子先輩」
私の名前を呼んだ千晴に、教室内が静まり返る。
「柚子先輩とは?」そんな空気が一瞬だけ流れたが、すぐにその空気はなくなった。
「ててててて、鉄子先輩じゃんっ」
「な、何でっ?ててててて偵察っ?」
「さ、騒ぐなっ、減点対象にされるぞっ、冷静になれっ」
「ぐっ、緊張で、胃がっ」
大きな声は出さないが、小さな声でそれぞれが様々なことを言っている。
驚いている者、青ざめている者、泣き出しそうになっている者。様々だが、歓迎されていないことは確かだ。
だが、その中で千晴だけは違った。