推しに告白(嘘)されまして。

2.付き合うとは?




*****



次の授業を受けるべく校舎内を移動していると、それは突然始まった。



「で、アンタたちって結局付き合ってるの?」

「え、もろちん」



私の隣を歩く雪乃の質問に私は首を傾げながらも答える。
無表情な雪乃の当たり前すぎる質問の意味が全くわからない。



「じゃあ聞くけど付き合ってから何したの、アンタたち」

「え、それは…」



雪乃の次の質問に答えようとしたが、そこで私は言葉を詰まらせた。
何もしていないからだ。

確かに付き合うようになってから目を合わせて互いに挨拶をするようになったが、それだけで。
よく話に聞く、一緒に登下校だとか、昼食を食べるとか、そういうことは一切していなかった。
それどころかよく考えると連絡先さえも知らない。SNSだってもちろん繋がっていないし、知らない。
何も知らない。
挨拶をきちんとするようになっただけだ。
付き合う前とほぼ状況は変わらない。



「…やっぱり何もしていないわよね。アンタ朝は気がつけば校門にいるし、昼は基本教室で私と食べているし、放課後は委員会活動でしょ?隣にいる私でさえもアンタと王子の関係が全くわからないのよね」

「あー。うん」

「それでアンタたち本当に付き合ってるの?」

「…うん」



先ほどは、何を当然のことを、と思っていた質問も今では意味が違って聞こえてきた。
雪乃は改めて私たちの関係を確認しているのだ。
あまりにも変わらない私たちの関係を。




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