推しに告白(嘘)されまして。




「いい?バスケ部の王子こと、悠里くんの恋愛ごとは誰もが注目するセンシティブな話題なのよ?常にいろいろなところに目があると思った方がいいわ。それでここ数日、アンタたちの関係がどう見られているか知ってる?」

「え?んー。まさか付き合うとは思わなかった意外な組み合わせ、とか?」

「違う。本当に付き合っているのか、よ」

「ええ!?」



雪乃のどこか神妙な言葉に思わず大きな声を出してしまう。
付き合う以前とそんなに変わらないとはいえ、会えば必ず見つめ合って挨拶をする仲なのに!
そんな姿を見て何故!?

それを雪乃に伝えれば「友達でも知り合いでも見つめ合って挨拶くらいするでしょうが」と呆れながらツッコまれた。
…確かにそうだ。



「でもじゃあ何でまだ付き合っていない、じゃなくて、付き合っているのか、と疑われているのかわかる?それは王子が告白されそうになった時に、アンタと付き合っているからって言っているからよ。それからバスケ部連中もその事実をとにかく言い回っているみたい」

「…っ!」



雪乃に教えられた事実に私は目を大きく見開く。
それから自分のことを責めたい気持ちでいっぱいになった。

私は何の為に推しと付き合うという名誉を授かったのか。
推しを告白の嵐から守る為に、そのついでに幸せなおこぼれを頂く為に私は推しと付き合い始めたのだ。
それを付き合っているという事実だけに満足して、普通の生活を送り、本来の仕事もせずに推しを窮地に立たせるなんて。

何ておこがましい!
沢村くんを推す者として恥ずかしいの極み!




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