推しに告白(嘘)されまして。
5.盛大な勘違い
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文化祭準備もいよいよ大詰め。
文化祭まで残り、2日。
私は今、急遽必要になったものを買う為に、1人で街へ出ていた。
夕方の街はさまざまな人で賑わっている。
私と同じような学生が制服のまま放課後の時間を友達と謳歌していたり、スーツを着た大人が疲れた顔で歩いていたり。
大学生のような若者のグループが楽しそうにお店に入る姿や、たくさんの買い物袋を持って歩く人、子どもと手を繋いで帰路についている人など、本当にたくさんの人がここにはいた。
私はその人混みの中を、ただただ目的の場所を目指して、歩いていた。
「離しなさいよ!」
そんな人混みの中、突然、気の強そうな女の子の怒りに満ちた声が聞こえてきた。
どうしたのだろう、と疑問に思い、声の方を見れば、たまたま人の隙間からその声の主が見えた。
見覚えのある透明感のあるふわふわの栗色の髪。
高めの位置で結ばれた揺れるハーフツイン。
千晴によく似た気の強そうな綺麗な顔。
ーーー千夏ちゃん?
そう気づいた時には、反射的に私は千夏ちゃんの方へと、向かっていた。
千夏ちゃんは3人の若そうな男の人に囲まれており、そのうちの1人に、腕を掴まれている状態だった。
「ちょっと、嫌がっていますよ?離してください」
千夏ちゃんの元に辿り着くと、私はまずは千夏ちゃんの腕を掴む男に凄んだ。
ここには何故か、あの千夏ちゃんの近くから離れようとしなかった、ゴリマッチョSPたちはいない。
状況はよくわからないが、千夏ちゃんは今1人のようだ。
千夏ちゃんは私の登場に嬉しそうな、安堵したような表情を浮かべた。
「いや、ちょっと待ってお姉さん。コイツが俺に汚らしいとか言ってきてさ…」
「当然よ!急に声をかけてきて、許可もなく馴れ馴れしく触ってきて!汚らしいでしょう!?」
私に突然責められる形となったお兄さんが、弁明させてくれ、と困惑したような表情を浮かべる。
だが、そんなお兄さんに千夏ちゃんは怒鳴った。