推しに告白(嘘)されまして。




あー。なるほど。

今の騒ぎの原因が何となくわかり、苦笑してしまう。

さすが千晴の妹だ。
マイペースで、自分勝手で、そして素直だ。

千夏ちゃんの主張は正しい。
知らない人に馴れ馴れしく声をかけられて、急に触られたら、ほとんどの人は嫌悪感を抱くはずだ。
それを千夏ちゃんはストレートに「汚らしい」と表現したのだ。

そりゃあ、相手も怒るよね。
言い方がよくなかった。



「すみませんでした。言い方が悪かったですよね。この子にもよく言い聞かせますので…」



お兄さんたちに申し訳なさそうに謝罪しながらも、それじゃあ、とさっさと千夏ちゃんの腕を取り、この場から離れようとする。
しかし千夏ちゃんの腕を掴むお兄さんは、何故か千夏ちゃんから手を離そうとしなかった。
…私の謝罪だけではほとぼりが冷めないのか。



「ねぇ、悪いと思ってるんなら、お詫びとして一緒に遊ぼうよ?お姉さんも綺麗だし」

「…」



そうきたか。

ニヤニヤと笑う千夏ちゃんの腕を掴むお兄さんに、イラッとしてしまう。
静かに怒りが満ちていく。しかし、それを私は表には出さず、至って冷静な表情を浮かべた。



「遊びません。用事があるんです」

「用事?じゃあ、それ、一緒に済ませちゃお?」



きっぱりと断りを入れた私に、また別のお兄さんがヘラヘラと笑いながら、声をかける。



「大丈夫です」

「人手は多い方がいいじゃん」



それからまた違うお兄さんが。



「いえ、私1人で大丈夫ですから」

「そんなこと言わないでさぁ。男3人もいれば結構心強いと思うけど?」

「…」



断り続ける私に、お兄さんたちは、それぞれヘラヘラとしつこく私に提案し続けた。
正直、千夏ちゃんが「汚らしい」と罵倒した理由も頷ける人たちだ。
こちらが何度も断っているのに、それを無視して、自分たちの都合を押し付けようとしてくるとは。



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