推しに告白(嘘)されまして。





「アナタ、何も持たない庶民にしては、とても素晴らしいお方なのね。学校での成績も上々、一年の時には異例の風紀委員長に大抜擢され、現在も任され、一目置かれている、正義感も強く、誰にでも平等に優しい。わたくしのことも、危険を(かえり)みず、すぐに助けた行動力。人格も申し分なく、見た目も悪くないわ」



突然始まった千夏ちゃんからの評価に、何だかむずむずする。
こんなにも他人からまっすぐハッキリと褒められる機会はなかなかない為、気恥ずかしい。
このストレートさ、さすが、千晴の妹だ。

気恥ずかしいが、気分よく千夏ちゃんのお話を聞いていると、突然、千夏ちゃんはその表情を曇らせた。



「アナタは本当に素晴らしいお方だったわ。お兄様がアナタを選んだのも頷ける。ただ…」



そこまで言い、千夏ちゃんは一度、言葉を止める。
それから意を決したように、私をその綺麗な瞳でギロリと睨みつけた。



「男癖が悪すぎるわ!アナタ!」



ビシッ!と千夏ちゃんに人差し指で勢いよく指されて、何故、と思う。

男癖が悪いとは、すなわちたくさんの男に手を出し、関係を築いている、ということだ。
雪乃がそう言われるのはまだしも、私がそう言われてしまう理由がわからない。
私はただ1人、悠里くんしか推していない。
しかも、推すことしかしていないのだ。
ちょっと彼女ポジションに収まっているが、それだけなのだ。



「あの千夏ちゃん?私、男癖悪くないと思うんだけど…」



あまりにもおかしなことを言っている千夏ちゃんに、恐る恐る伺うと、キッとキツく睨まれた。



「男癖が悪くない?まぁ、それは何かしら?自分は正常だと言いたいのかしら?」

「…え、うん。まあ、そうだけど」

「はっ、片腹痛いわ、全く」

「え、えぇ?」



眉間にシワを寄せる千夏ちゃんに私はただただ戸惑う。
千夏ちゃんが何故、ここまで自信を持って、私に「男癖が悪い!」と言い切れるのか本当にわからない。



< 147 / 395 >

この作品をシェア

pagetop