推しに告白(嘘)されまして。
疑問を抱き続けていると、千夏ちゃんは呆れたように笑い、口を開いた。
「お兄様という恋人がいながら、アナタは鷹野高校バスケ部の王子様と呼ばれるお方、沢村悠里と関係を持っているわよね?まるで恋人のように振る舞い、周りにそうであると勘違いさせ続けるその行為。表では、沢村悠里と、裏ではわたくしのお兄様と付き合うとは、ふしだらすぎるわ!よってアナタは華守にふさわしくない!この最低女!」
「…」
最初こそ、まるでわかっていない私におかしそうに説明していた千夏ちゃんだが、どんどんそこに熱が入っていき、最後にはまるで私を断罪するように叫ぶ。
そんな千夏ちゃんに私は苦笑いを浮かべた。
…何もかも違うからだ。
とんでもない誤解だ。
「千夏ちゃん。あのね。私、千晴とは付き合ってないの。私が付き合っているのは悠里くんなの」
「…は?」
未だに怒りの熱が冷めていない様子の千夏ちゃんに、ゆっくりとまずは間違いを訂正する。
すると千夏ちゃんはその形の良い眉をさらにひそめた。
「お兄様とアナタは付き合っているでしょう?恋人同士でしょう?わたくしは知っているのよ?どうして嘘をつくの?」
「嘘じゃないよ。本当だよ」
「…はい?」
私の説明に千夏ちゃんが混乱した表情を浮かべる。
それから数秒黙ったあと、信じられない様子でまた喋り出した。
「ここ数日、わたしく、アナタと一緒にお兄様のことも見ていたの。お兄様がアナタに向ける視線には、確かな好意があったわ。お兄様はアナタが絶対に好きなのよ?アナタがいるから、お兄様は文化祭にもきちんと参加しているの。中学時代は一度だってきちんと参加していなかったもの。そんな無利益なことをするくらいなら会社のことをした方がいい、とおっしゃって、仕事をしていたほどよ?わかる?お兄様はアナタが好きなの」
「…はぁ」
千夏ちゃんの熱弁に押され気味に、覇気のない返事をする。
どんなに熱弁されても事実は変わらない。
そして千夏ちゃんは大きすぎる勘違いをし続けている。
千晴は私を異性として好きなのではない。
あれは自分を見てくれる他人への好意、いわゆる懐いているというやつだ。
千晴にとって私はお母ちゃんorお姉ちゃんなのだ。