推しに告白(嘘)されまして。
「ダメとかじゃないよ。千晴はいい人だよ。だからこそ、私じゃなくて、もっと素敵な人が千晴には現れるし、きっとその人と一緒になる方が幸せなんだよ」
千夏ちゃんに言い聞かせるようにそう言って、千晴の姿を思い浮かべる。
すらっとしたモデル体型の千晴の横に、小さくて上品な女性が幸せそうに笑っている。
そんな女性を金髪から覗く、綺麗な顔が優しげに見つめていて、その柔らかい表情は、私を見ている時と同じ表情で…。
そこまで考えて、変な気分になった。
何故かあまりいい気分にはなれない。
自分の後輩のリアルすぎる未来に思いを馳せたせいなのか。
「お兄様だけよ…」
「へ?」
千晴のことを考えていると、千夏ちゃんが小声で何かを主張していた。
あまりにも小声で何を言っているのかわからなかったが。
「だから、アナタを幸せにできるのはお兄様だけよ!お兄様以外、誰もアナタに釣り合わない!アナタはわたくしのお姉義様になるの!」
「えぇ?」
首を傾げていた私に千夏ちゃんは今度は大きな声でそう主張した。
まさかの結婚まで見据えられており、驚きで思わず目を見開く。
ど、どうして、そこまで…。
「いい!?必ずアナタにお兄様を選ばせてみせるわ!アナタは将来、華守柚子になるのよ!」
本日2回目の千夏ちゃんからの指差しを受ける。
千夏ちゃんは勢いよくそれだけ言うと、「ここはわたくしが払うからお構いなく」と一言いい、その場から去っていった。
ーーー嵐のような子だ。
去っていく千夏ちゃんの背中を見つめながら、呆然と私はそんなことを思ったのであった。