推しに告白(嘘)されまして。
8.恋、嫉妬、文化祭。1日目。

1.オムレツをアナタに




*****



ついに文化祭当日。
私は風紀委員として、タブレットを片手に学校内を隈なく見回っていた。
もちろん、委員会の仕事をする為だ。

風紀委員の文化祭での仕事、採点は、文化祭中の2日間にも当然行われる。
良い行いには加点を、悪い行いには減点を、この手元にある学校支給のタブレットでするのだ。
現時点では、各クラスや部活に大きな得点の開きはなく、どこも並んでいる状況だった。

この風紀委員による得点に加え、明日の午後から行われる人気投票の票数が、最終的な結果へと繋がる。
その為、当然どのクラス、どの部活も、票を得ようと、はりきっていた。
ちなみに投票は明日の午後からと言ったが、舞台部門だけは、正確には、全ての舞台が終わってからだ。

ふと、視界の隅に、泣いている低学年くらいの小学生の女の子に、優しく声をかけている男子生徒の姿が入る。
とても素晴らしい行いだ。

少し様子を見てみると、そのまま解決しそうな雰囲気だったので、男子生徒のクラス、部活を確認して、そこに一点加点した。

それから次に目に付いたのは、嫌がる女子生徒に無理やりな客引きをしている男子生徒だった。



「嫌がっていない?それ?ねぇ?」

「ひぃ!ひぃぃいい!て、鉄子ぉ!?」



鬼の形相で突然現れた私に、男子生徒は顔面蒼白で叫ぶ。
まるでお化けでも見たかのようなリアクションに、心の中で、失礼な、とツッコミを入れた。



「イエローカードです。次、同じとこ見たら問答無用で減点だから?わかった?」

「は、はいぃ!肝に銘じますっ!」



ギロリと私に睨まれて、男子生徒はビシッと背筋を伸ばす。
全く、と呆れながらも、私はその場から離れた。

そのままの流れで次に辿り着いたのは、2年スポーツ科の〝吸血鬼カフェ〟だった。
そう、私の推しである悠里くんのお勤め先である。

だが、今は委員会の仕事中。
浮かれている場合ではない。



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