推しに告白(嘘)されまして。




「…どうだった?」

「楽しかった。先輩も一緒だったし」



無事に脱出に成功した千晴にまずは感想を聞いてみる。
すると千晴は淡々とそう答えた。
無表情だが、その瞳は輝いており、よく見れば楽しかったのだと伝わる表情だ。



「ならよかった。もう1人で入って来ないでよ?私に会いたいなら脱出ゲーム以外で会いに来て。わかった?」

「はぁい」



言い聞かせるように千晴をまっすぐ見ると、千晴は何故か嬉しそうに笑った。
何が嬉しいのか全くわからない。
どちらかと言えば、注意されているのに、本当に変なやつだ。



「お姉さん、ありがとう」



じっと千晴をおかしなものでも見る目ような目で見ていると、千晴はゆっくりと私に迫ってきた。
そしてその美しい顔を私に近づけ、私の顔に影を落とした。

…どうしたのだろうか。

さすがにこの距離まで詰められると、心臓がバクバクと暴れ出す。
いくら千晴が相手とはいえ、恥ずかしく、耐え難い。
頬に熱が帯び始め、いよいよ限界を迎えた、その時。

千晴は私のおでこにそっと唇を寄せた。



「…っ」



柔らかく熱い感触に思わず、息が止まる。
呼吸の仕方がわからない。



「じゃあね。また会いに行くから。今度は脱出ゲーム以外で」



そう言って甘く微笑み去っていく千晴の背中を私は呆然と見つめた。

わ、私、おでこにキスされた?



「ねぇねぇねぇねぇ!今の見た!?」

「キ、キスされてたよね!?」

「きゃあ!やっぱりされてたよね!?」

「やばい!心臓止まる!破壊力!」



私たちの姿を見て、徐々にその場にいた生徒たちは黄色い声をあげ始める。
私はそんな可愛らしい悲鳴を聞きながら、ずっとバクバクと心臓を忙しなく鳴らし続けた。

え、キ、キスされたよね?
え?



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