推しに告白(嘘)されまして。
3.好きが溢れて side悠里
side悠里
慌ただしく時間は過ぎていき、あっという間に午後になった。
先ほどまでクラスのカフェにいた俺は、今度はバスケ部の出し物の為に、ユニフォーム姿で体育館にいた。
バスケ部の出し物は、スリーポイントラインから3回シュートを打つ、というシンプルなスリーポイントシュートゲームだ。
3回中1回でもシュートが決まれば、ユニフォーム姿の部員、もしくはジャージ姿のマネージャーとチェキが撮れる、という特典がある。
体育館の壁には、各部員、マネージャーの写真が、まるでホストクラブのようにデカデカと貼られており、そこから誰とチェキを撮るのか決められるようになっていた。
ちなみにうちの部のマネージャーは男だ。
二日間行われる文化祭の中で、俺の自由時間は、明日の午後だけだった。その午後の時間はもちろん、柚子と過ごす予定になっている。
そんなことを考えていると、ふと、先ほど会えた柚子の姿が頭に思い浮かんだ。
いつもと変わらない長い綺麗な黒髪をポニーテールにしている柚子。
けれど、その格好はいつもとは違い、紺色のセーラーで。
…セーラーも可愛かったな。
頬を赤らめてこちらを見つめる柚子の姿を改めて思い出し、俺はその可愛さを噛み締めた。
最初は本当に最低だが、フラれるつもりで告白した。
それがたくさんの俺への好意を止める手段の一つだったからだ。
けれど、一緒にいるうちに、いろいろな柚子を一つ一つ知っていくうちに、確実に惹かれていった。
きっと少しでも一緒にいたいと思うのも、ふとした瞬間に思い出して可愛いと思うのも、華守相手につい嫉妬してしまうのも、全て柚子が好きだからだ。
きっとこの想いこそが〝恋〟なのだ。
「悠里、最近、鉄子といい感じじゃん」
バスケゴールの下で、お客さんを待っていると、陽平が気だるげな笑顔でそう話しかけてきた。