推しに告白(嘘)されまして。
「この前着てたのはセカンドユニだったから。こっちの方がよく着るよ」
そう言って、ユニフォームを軽く掴んで、柚子に見せるように引っ張ると、柚子は変わらずキラキラした目で興味深そうに、俺のことを上から下までじっくりと見つめていた。
「見過ぎ」
そんな柚子の観察を止めたのは浪川さんだった。
呆れたようにそれだけ言い放つと、「私たちはバスケ部のゲームをしに来たんでしょ?」と気だるげに確認していた。
「どっちが先にする?」
柚子と浪川さんの様子を見て、陽平がそう淡々と2人に聞く。
2人は顔を見合わせて、しばらく黙った後、「じゃあ私が」と無表情に浪川さんが前に出て、「雪乃から」と真剣な表情で柚子は浪川さんに最初を譲った。
一言も喋っていないのによく意見が一致したな、と2人の仲の良さに思わず感心してしまう。
それだけお互いのことを、〝知っている〟のだろう。
だからできることだ。
2人の答えに陽平は「はい、どうぞ」とまずは浪川さんにバスケットボールを渡した。
ボールを渡された浪川さんがスリーポイントラインに立つ。
それからその場にいる全員に見守られながら、シュートを放った。
ーーーシュートを放つこと、3回。
どのシュートも、ゴールに届くことさえできなかった。
「えー。チェキ撮りたかったなぁ」
残念な結果に浪川さんは肩を落とし、ラインから離れていく。
しかし、そんな浪川さんをバスケ部員たちは放っておかなかった。
「ま、待って!浪川さん!」
「こ、今回は特別!特別にチェキ撮影できます!」
「え?いいの?」
頬を赤く染め、一生懸命声を張り上げる部員たちに、浪川さんはぱちぱちとまばたきをする。
戸惑っているようにも見える浪川さんに部員たちは、「いいんです!」と元気よく宣言していた。
それから浪川さんは嬉しそうに部員の中から、一番筋肉のある先輩を指名し、チェキ撮影を始めた。