推しに告白(嘘)されまして。
浪川さんの番が終わり、次はいよいよ柚子の番だ。
ゴールを睨みつけている柚子に俺はボールを渡した。
「頑張って、柚子」
俺の言葉に真剣な表情のまま、柚子はこくりと頷く。
コートに立つ柚子は気迫こそあるが、誰よりも小さく見えた。
普段あそこに立つのが、俺のような男ばかりだからだろうか。
本当に小さく見えて、可愛らしく思ってしまう。
あの小ささ、細さなら、浪川さんのようにゴールにボールを届けることすらもできないだろう。
そう思って見ていると、柚子はまるで経験者の、それも上級者のような綺麗なフォームでボールを放った。
届かないと予想していたボールは、その予想に反して、確実に入る軌道で、ゴールへと向かう。
そして、そのボールは吸い込まれるように、ゴールネットへと落ちていった。
柚子が放った綺麗なシュートは、この場を一気に支配した。
全員の視線が柚子へと注がれる。
「…え、鉄子バスケ経験者?」
「すっげぇ、いいシュートだったな」
柚子のシュートに、バスケ部員たちは、ざわつき出す。
部員たちの視線を一身に受けながらも、柚子は気にする素振りさえ見せず、2本目を放った。
そのシュートも綺麗な軌道で、リングに当たることなく、ネットを揺らす。
その次に放たれたシュートもまた同じだった。
気がつけば、体育館中の人たちが柚子のシュートを固唾を飲んで見守っていた。
この時点でスリーポイント連続得点を決めた参加者は、柚子が初めてだった。
部員でさえも、連続得点はプレッシャーなどから難しい。
それを柚子は涼しい顔でやってのけた。
「…す、すげぇ」
静まり返っていた体育館に誰かの呟きが響く。
そしてそれを皮切りに、部員たちは口々にいろいろなことを言い始めた。
「うちに女子バスケ部があれば…」
「クラブに所属すればいんじゃね?」
「鉄子に隙なし、だな」
「サイボーグじゃん」
誰もが驚き、信じられないといった表情を浮かべ、柚子を讃えている。