推しに告白(嘘)されまして。
「柚子、すごいね!今のはなかなかできることじゃないよ?」
全てのシュートを見事に決め、涼しげな表情で立つ柚子に、俺は興奮気味で駆け寄った。
するとそんな俺に柚子は照れくさそうに、はにかんだ。
「えへへ。実はちょっとスリーポイントシュートだけは得意で…」
「スリーポイントだけ?」
「うん、スリーポイントだけ」
おかしなことを言う柚子に首を捻る。
スリーポイントだけ得意とかあるのだろうか。
スリーポイントが入るなら、普通のシュートも、フリースローも入るはずだ。
なので、〝スリーポイント〟だけが得意なのではなく、〝シュート〟自体が得意、が正解なのでは?
柚子の言動を不思議に思っていると、浪川さんがニヤニヤと笑いながらこちらに近づいてきた。
それから全ての謎の答えを、柚子をからかうように口にした。
「柚子、この日の為に夜な夜な近所のバスケットコートで、スリーポイントシュートの練習だけしたんだよねぇ」
「…っ。ちょ、雪乃!それは言わないでよ!」
「いいじゃん別にぃ。柚子の努力、すごいじゃん?」
「か、かっこよく決めたかったのに…」
浪川さんの言葉に柚子はどんどん小さくなっていく。
普段はなかなか見せない弱々しい姿。
気を許している浪川さんの前だからこそ、こんな姿を見せるのだろう。
珍しく、そしてあまりにも愛らしい姿に、俺の心臓はまたぎゅうと締め付けられた。
先ほど見せてくれた完璧な姿は、この日の為に柚子が頑張った成果だったらしい。
俺の為に頑張ってくれたのかな。
そうだとしたらすごく可愛いな。
柚子の努力に頬が自然と緩くなる。
…が、それと同時に浪川さんのある言葉が引っかかった。