推しに告白(嘘)されまして。
「じゃあ、やっぱり頼ってほしいな。彼氏の俺を」
「…っ、う、うん」
柚子がやっと俺の言葉にぎこちなく頷く。
うるうると大きな瞳を潤ませ、輝いている瞳には、はっきりと、〝嬉しい〟と書かれていた。
やはり、柚子はとても可愛い。
ダメだ。好きだと自覚してから、柚子が可愛らしくて仕方がない。
どこか甘酸っぱい空気が流れる中、その空気を壊すように明るく、隆太が声を張った。
「で、チェキのご指名は?もちろん?」
キラキラと目を輝かせ、隆太を始め、後ろにいるバスケ部員たちが柚子のことをじっと期待に満ちた目で見る。
「もちろん、悠里くんで」
そんな部員たちに柚子はいつもの真剣な表情を作り、ゆっくりと頷いた。
当然、そうだろうと、主張するように。
「ご指名いただきましたー!」
「悠里でーす!」
「チェキ撮影はこちらでーす!」
柚子の答えに、ワッと体育館内が明るくなる。
俺のことを応援してくれている部員たちは皆、嬉しそうだ。
もちろん、部員たちと同じように俺も嬉しかった。
…やっぱり、俺の為に頑張ってくれたんだな。
嬉しさを噛み締めながら、柚子と一緒にチェキ撮影場所である、壁際へと移動する。
すると、その道中に顔色の悪いバスケ部の後輩、慎を見つけた。
慎は一年の進学科だ。
あの顔色はおそらく、明日に控えた、舞台〝白雪王子〟からくるものなのだろう。
慎は全校生徒の注目が今もなお集まっている、白雪王子の姫役で、姫役に決まってからというものずっと緊張で胃が痛いと泣いていた。
白雪王子の相手役、姫役は未だに公表はされていない。
それが一年進学科の戦略らしい。
だが、俺たちバスケ部員は、全員、慎が姫役だということを知っていた。
あまりにもある日を境に、辛そうにしていた慎に問い詰めた結果そうなった。