推しに告白(嘘)されまして。
いつもの光景だが、あまりにも可哀想で、何か声をかけようとしたその時。
「君、大丈夫?」
俺よりも先に、柚子が慎に心配そうに声をかけていた。
柚子に顔を覗かれて、慎は瞳を潤ませる。
今にも泣き出してしまいそうだ。
「うぅ、はい、だ、大丈夫です…」
「そう…。熱とかは?」
「な、ないと思います…」
弱々しく受け答えをする慎の額に、柚子は手を伸ばし、そっと置く。
「うん。熱はなさそうかな。無理はしないように」
「…はい」
それだけ淡々と言って、柚子は制服のポケットから飴を出し、慎に渡した。
それを受け取った慎は泣きそうな顔で弱々しく頷いた。
2人のやり取りを見て、やっぱり好きだな、て思う。
柚子の周りをよく見て、簡単に手を差し伸べられる優しさが好きだ。
「さぁ、2人ともこっちこっち!」
やっと壁際にたどり着いた俺たちに、バスケ部の1人が明るく声をかける。
いよいよチェキの撮影…と思った矢先。
「て、鉄崎せんぱーい!」
やっと見つけた、と言わんばかりに柚子を呼ぶ、女子生徒が現れた。
駆け寄ってきた女子生徒はただならぬ雰囲気で、とても困っていることが伝わった。
「…あ、あの、今いいですか?ちょっとお聞きしたいことが…」
肩で息をしながら、遠慮がちに柚子を見つめる女子生徒。
そんな女子生徒に柚子は嫌な顔一つせず、冷静に尋ねた。