推しに告白(嘘)されまして。




「何があったの?」

「じ、実は、予算の話と、3年普通科で揉め事がありまして…」



一生懸命何があったのか話し出した女子生徒に、柚子は真剣な表情で耳を傾ける。
それからしばらく聞いた後、一呼吸ついて、申し訳なそうに俺を見た。



「…悠里くん、ごめん。ちょっと、立て込みそうで…」

「わかった。すぐに行ってあげて。チェキはあとにしよう」

「せっかく私の為に時間作ってくれたのに…。本当にごめん」

「いいよいいよ。それよりも早く行ってあげて」

「…うん」



笑顔で柚子を送り出す俺に、柚子が申し訳なさそうな顔で背を向ける。
俺の対応に女子生徒は「あ、ありがとうございます!悠里先輩!」と半泣きで頭を下げ、柚子の隣へと駆け寄った。

小さくなっていく柚子の背中を見て、改めて、柚子はすごい人なのだ、と感じる。

あんなにも頼りにされて、学校の風紀を守って。
可愛いところもあるけど、きちんと仕事をする責任感と強さもある。
惜しみなく努力もし、スリーポイントシュートをあそこまで完成させる力もあって…。

何て眩しい存在なのだろうか。
遠ざかる背中に、俺はまた好きが溢れた。


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