推しに告白(嘘)されまして。
体育館の壁に体を預けて、柚子のことを考えながら、柚子を待つ。
そんな穏やかな気持ちでいると、その声は聞こえてきた。
「さっきのやばかったねぇ!」
楽しそうにはしゃいでいる女子生徒の声が、体育館の開かれた扉の外から聞こえてくる。
俺はその声に自然と耳を傾けた。
「千晴くんってああいうことするんだね!」
「でも、あれは鉄子先輩だけだよねぇ」
「そこがまたたまんない!」
え。
女子生徒たちの会話に胸がざわつきだす。
ーーー華守と柚子に何かあったのか。
話の内容が気になり、俺は外の声に集中した。
一言も聞き逃さないように。
「…で、あそこでキスするなんてね!さすがの鉄子先輩もたじたじだったじゃん!」
「あれは反則だよねぇ。鉄子先輩も美人だし、絵になるよね、あの2人」
「結局どっちと付き合ってると思う?てか、付き合ってて欲しい?」
「千晴くん!」「悠里先輩!」
楽しそうな女子生徒たちの声に、俺の体温は一気に冷えきった。
指先からどんどん感覚がなくなっていく。
今の話は現実なのかと受け入れられない。
キスされた?柚子が?
華守に?
胸の中をどんどん暗い感情が支配する。
ーーーこれは嫉妬だ。