推しに告白(嘘)されまして。
「やばいぞ!やばいぞ!」
渦巻く感情に表情を暗くさらせていると、勢いよくバスケ部員の1人が体育館内に飛び込んできた。
「て、鉄子がさっき脱出ゲームの出口で華守におでこにキスされたって!で、そのせいで、鉄子に二股疑惑が…」
勢いよく、焦った様子で話し続けていた部員が、俺の表情を見て、言葉を止める。
それから「もう聞いたのか…」と憐れむような表情を浮かべた。
俺たちの間に重たい沈黙が流れる。
しかし、それを陽平が破った。
「大丈夫だ。鉄子の彼氏はお前だ、悠里」
明らかに暗い俺を、陽平が無表情だが、気遣うような瞳で見て、力強くそう言う。
「けど、華守も普通に手強い。アイツも100%鉄子が好きだしな。だから外堀を埋めるんだ。ちゃんと悠里が鉄子の彼氏であることを主張するだ」
そこまで言うと、陽平はスマホを触り出し、ある写真を俺に見せた。
「これに出ろ、悠里」
ずいっと向けられたスマホの液晶には、〝鷹野高校、ベストカップルコンテスト〟と書かれたチラシがあった。
鷹野高校ベストカップルコンテストとは、文化祭期間中に行われる、名前の通りのコンテストのことだ。
主催は放送委員で、参加方法はツーショット写真の提出のみ。
初日に写真の募集が行われて、最終日にその提出された写真が展示され、その写真を元に、投票が行われるのだ。
たくさんの票を得て、晴れてベストカップル賞に選ばれると、いくつかの特典も得られる。
一つは、服飾部が一から作ったウェディングドレスとタキシードを着て、写真撮影ができるというもの。
そしてもう一つは、後夜祭の時に、個室のようなカップル席が用意されるというものだった。