推しに告白(嘘)されまして。
9. 恋、嫉妬、文化祭。2日目。

1.お願いです!先輩!




side柚子


昨日は最高の1日だった。
推しからのファンサに次ぐファンサ。
吸血鬼カフェでの吸血鬼な悠里くん。
バスケ部の出し物でのユニフォーム姿の悠里くん。
オムレツを私から食べ、チェキ撮影まで。
まるで夢のような1日で、さらにはカップルコンテスト出場の名誉までいただけるとは。

全てが最高で、最強。素晴らしい。

悠里くんのことで頭がいっぱいだ。
けれど、その中に、千晴の姿もあった。

昨日の千晴は心臓に悪かった。
無茶を言って、それを通す姿はいつも通りで、呆れてしまったが、まさか最後の最後におでこに、…キ、キスをしてくるとは。

あんなこと、誰にもされたことなどない。
初めてだった。

近づく千晴の顔は、美しく、迫る金髪は輝いていて。
そっと触れた唇の柔らかさと熱が今でも消えてくれない。
嫌というほど何度も何度も繰り返し、あの場面を鮮明に思い出してしまう。



「…んんっ」



また思い出してしまったあの場面に、私は軽く咳払いをして、ぶんぶんと首を横に振った。

千晴はただの後輩だ。
何を意識しているんだ。
あれはきっと千晴なりのお世話になっている先輩に対する変な愛情表現なのだ。

大金持ちのボンボンなら、今まで海外で過ごす時間もあったはず。そこでそういったスキンシップの方法を学んだのかもしれない。

その結果、あの場面でキスをかましてきたのだ。

ーーー全く、心臓に悪いやつだ。

仲の良い相手が私しかいないので、日本人の適切な距離感をいまいちわかっていないのだろう。
先輩としてきちんと正しい距離感を教えなければ、今後千晴の周りに死人が続出してしまう。



「柚子?どうしたの?」



1人で忙しなく顔色を変えていると、隣にいた悠里くんが心配そうに私を見た。



「あ、いや!何でもない!ちょっと考え事してて!」



なので、私は、そんな悠里くんに慌てて首を振った。
決して心配されるようなことはない、と。



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