推しに告白(嘘)されまして。
2.お姫様にキスを
*****
そこから私はあっという間にお姫様に仕立て上げられた。
今私が問題なく着ている水色と白色のパンツスタイルのドレスは、最初は男子生徒が着るものだったので、私にはかなり大きかった。
だが、進学科の生徒たちは、私でも着られるようにと手を必死に動かし続け、何とか形にしてみせた。
またいつもポニーテールにされている髪は、今日は綺麗にまとめられており、頭には綺麗なティアラまである。
生徒たちの手によって、軽く化粧までされて、私は、誰がどう見ても、〝お姫様〟になっていた。
「…う、うぅ、せ、先輩、本当にすみません」
全ての準備を終え、舞台裏に立っていると、本当に顔色の悪い男子生徒が、泣きながら謝罪をしてきた。
その謝罪してきた生徒は、まさに昨日バスケ部の出し物のところにいた、あの顔色の悪い生徒で、何故彼があの時死にそうな顔をしていたのか、今になって理由がわかった。
プレッシャーに耐えられなかった生徒とは、悠里くんの後輩である、バスケ部の彼だったようだ。
「お、俺、ちゃんと裏方で先輩のサポートしますから…。本当、すみません」
泣きじゃくる男子生徒に私はポンッと肩を叩いた。
「大丈夫よ。あとは任せなさい」
「ぜ、ぜんばーい!!!!!」
力強い私の言葉に、ぶわぁ!と、また男子生徒は泣き出す。
そんな男子生徒に困ったように笑っていると、突然、舞台裏が静まり返った。
先ほどまでの喧騒がまるで嘘かのように、何も聞こえない。泣いていた男子生徒でさえも、それをやめ、ある場所に視線を奪われていた。
生徒たちが皆、視線の先で息を呑む。
「先輩」
全員の視線を奪っていた存在、千晴は嬉しそうに私の名前を呼んだ。