推しに告白(嘘)されまして。

3.溺れる甘さで




*****


輝く星空の下。
グランドの上空には、色とりどりの生徒お手製の提灯が吊るされており、お祭りのような雰囲気が広がっている。
文化祭の全てのプログラムを終えた生徒たちは、ここで、後夜祭という名の打ち上げをしていた。

灯を灯された提灯の下には、テーブルが並べられており、軽食や飲み物がある。
それを楽しむ生徒たちの視線の先には、メインステージがあり、そこで、さまざまな催し物が行われていた。

まず、行われたのは、生徒会による文化祭の結果発表だ。
各部門の最優秀賞に選ばれたのは、出し物部門は、普通科三年の超大型迷路で、部活部門は、バトミントン部の占いの館だった。
この結果を聞いた時、「悠里くんのクラスの吸血鬼カフェが最優秀賞じゃないのかぁ」とちょっと残念に思ったが、確かにあの迷路はなかなか面白かったので、納得できた。

そして、最後。舞台部門なのだが、何と千晴たちのクラスの白雪王子が最優秀賞に選ばれた。

あの盛り上がり方、おそらくぶっちぎりだったのだろう。結果を聞かずとも、何となくそうなのだろうとは思っていた。

結果発表が終わった後、次に行われたのは、有志によるバンドのライブだった。
この後はダンス部がダンスを披露するらしい。

ステージ上のライブに盛り上がる生徒たちの背中を見ながらも、私はほっと一息ついていた。
いろいろあったが、大きな問題もなく、無事終えられた。
文化祭中の風紀委員長としての荷がやっと下りた瞬間だった。

私は今、あの生徒たちの喧騒の中にはいない。
生徒たちの喧騒の後ろ、少し高いところに用意された小さな個室のような場所で、悠里くんと2人でいた。

何故個室のような、と表現したのかというと、上下左右、後ろだけが木の壁に囲まれているからだ。
ステージの見える前方だけは、壁がなく、空いており、そこからグランド全体が見えるようになっていた。
横にカーテンもあるので、閉めれば、プライベートな空間にもできるようだ。

この個室にぴったりと収まる2人掛けのソファに、私たちは肩を並べて座っていた。
この小さすぎるソファでは、どうしても悠里くんと肩が触れ合ってしまう。
タキシード姿の悠里くんと、だ。



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